PAOの違うところ。
PAOは小学校や中学校ではないので、そこではできない体験をしていきたい。そのためにどこがどうちがうのかを、はじめの日に伝えたよ。次の4つだったね。
①楽しみながら学ぶ。
②スポーツみたいにやってみて学ぶ。
③正しくきちんとではなく、自分らしく自由に。
④やりたいから来る。
この4つ、よく理解してやってくれているみたいで、うれしいよ。しっかり楽しんで 参加してくれているし、とにかくやってみてくれている。その子らしい自分の考え方を 発表できるようになってきているし、やりたくて来ている子がほとんどみたい。
ただ、これらの考え方になじみがない人は、とまどいがあるようには見えるし、普段
の生活のクセで上手くできていないこともあるみたい。一つずつ見ていこう。
①楽しみながら学ぶ。
『楽しむ』と『学ぶ』は正反対に思う人もいるかもしれないね。これはまさにパラダ イムの違いだね。「勉強とはイヤなものであり、ガマンしてやるものだ。」というパラ ダイムと「勉強はやりたくてやるものであり、楽しんでやるものだ。」というパラダイ
ム。PAOでは後者のパラダイムで行きたいんだ。
『楽しむ』のパワーはすごいと思うんだ。楽しんでいる時は集中力が高まるし、ひら めきも出るし、つかれるどころか、エネルギーがあふれてくる。『楽しむ』のパワーを 使った方が成果が出やすいと思うんだ。
例えば、キライな食べ物を想像する。すると目が細くなって、顔をそむけたりする。 想像しただけなのに。身体が取り入れたくないと思って拒絶反応するんだね。逆に、好 きな食べ物を想像すると、目が開く。身体がそれを取り入れたいと思っている。イヤな ことをガマンしてやっても、体がついていかない。効率が悪いと思うんだ。
楽しんで参加してくれている子達の中にも「こんなに遊んでていいの?勉強になって いるの?」って心配になる人もいるかもしれないね。でも安心して。この勉強の仕方は 『アクティブラーニング』といって、海外で成果が出ているものなんだ。そのうち日本 でも広まると思うよ。ゆういちはその勉強をいっぱいしてて、これまでたくさんの人達 によろこんでもらえているんだ。
『楽しむ』の意味も幅広いよね。『ふざける』『てきとうにやる』『いいかげんにやる』『手を抜く』『ヘラヘラ笑いながらやる』のどれでもないよ。PAOの『楽しむ』 は『熱中する』とか『時間を忘れてやってしまう』とかそんな感じ。
だから必ずしも、楽しんでいる時に笑顔で遊んでいるというわけではないよ。例えば ゆういちは今このパオ本を書いているけど、書かなきゃいけなくて、イヤイヤ書いてい るわけじゃなく、書きたくて書いてるんだ。だから楽しんで書いているよ。でも、すご い時間がかかっているし、何度も書き直して大変だけど、楽しいと感じているって。で も笑っている瞬間はあまりない。ご飯やトイレに行くのを忘れるくらい熱中してやって いるんだ。こういうのが、PAOの『楽しむ』だと思うんだ。
②スポーツみたいにやってみて学ぶ。
『やってみて学ぶ』もよくやってくれているね。ゆういちの説明を聞いた後は、合図
とともにやってみる。それをやったことがなくても、よく分からなくても。
実はこれが難しい人ってけっこういるんだ。どうすればうまくいくかを先にしっかり 聞いてからじゃないと不安でやれない人や、自分で考えることができないので、お手本 を見てマネすることしかできない人など。
耳
ゆういちはわざと説明を少なくしたり、お手本をしないこともあるよ。それは、きみ が実際にやってみて発見するためなんだ。先に答えを言ってしまったら、自分で見つけ たり、考える楽しみがなくなってしまうから。もしゆういちが答えを言ってしまったら それにとらわれてしまって、それ以外の答えがせっかく見つかる可能性がなくなってし まうから。答えは一つとは限らないし、自分だけの答えが見つかるかもしれないから。 だから、やってみて、自分の答えを見つけてほしい。
③ 正しくきちんとではなく自分らしく自由に。
「正しく言わなければいけない。」「間違えたことを言ってはいけない。」そう考え て一言も話せない子もいるよ。ゆういちは「その気持ちはよく分かる」って、今、言っ てるよ。ゆういちは、今、この本を書いているけど、まさに、正しく書こうとしてる。 例えば、地動説や天動説のことはたくさん調べたよ。間違えたことを書かないようにし たいから。でも、そうするとなかなか文章が進んでいかないんだ。間違ってるかもしれ ないと思ったら、また調べてってやって、いつまでたっても完成しない。そこで、気づ いたんだよね。ゆういちは、カンペキを目指してたってことに。それで、結局、カンペ キを目指さないようにしたよ。だから、もしかしたら、間違っていることがあるかもし れない。そしたら、ゆういちに教えてあげたらいいと思う。
『正しくない』というのは、人間のいいところだと思うんだ。カンペキを求めるなら 機械にやらせればいい。機械にできない、自分らしさをぜひ見つけてほしいよ。それを
見つけるヒントは『間違えた瞬間』にあるような気がするよ。
④やりたいから来る。
だいたいの子達はやりたくて来てくれているみたい。でも、ほんの一部、イヤイヤやっているように見える子もいるよ。本当はそう思っていないんだろうけど、そう見えてる んだ。なんでそうなってしまうんだろう?いくつか考えてみたよ。
もしかしたら「やってみようよ!」「大丈夫だよ!」って言ってほしいのかもしれな
いね。でも、PAOでは気が進まない人に、やるように言ったり、「やってみなよ~」 ってすすめたりもしない。ちょっと背中を押すようなことをいうけど、あまり何度もし ない。甘やかすことになっちゃうからね。そんなことしなくてもできると思うんだ。た だ時間が人よりかかるだけかも。自分のタイミングでやっていいと思うんだ。
1ヨー
ゆういちは子どもを子ども扱いしないよ。簡単な言葉に直して話すけど、子どもだか らといって理解ができないとは思っていないんだ。ちゃんと伝えたり、話し合えばわか ると思っている。できないとみなして、世話をすることはないよ。
なんでイヤイヤやっているように見えるのかの理由のもう一つは、もしかしたら、周 リにそういう人が多いのかもしれないね。小学校の高学年くらいになってくると「一生 懸命やるのはカッコ悪い。やる気ない感じの方がカッコいい。」という人が周りに増え てきたりするよ。それに合わせるうちにクセになっちゃったのかもしれないね。
「やりたくなくて無理にさせられてます。」ていうのは、ある意味、楽なんだよね。 もし失敗しても「だってやりたくなかったから」って言い訳ができちゃうから。でも、 やリたくて積極的にやってて失敗したら、言い訳できない。失敗を認めるしかない。失 敗を認めるのがカッコ悪いと思うので、初めから言い訳を準備しているんだよね。では なんで言い訳を準備しなきゃいけないのかというと「失敗しそうだから」。やる前から 上手くいく自信がないんだよね。
でもね、PAOでは失敗しても、誰もバカにしないし、誰も怒らないから、それをやらなくてもいいんだ。