話してみよう。

それでは、実際に話してみよう。
効率よく上手くなるには
とても簡単なことからスタートして
少しずつ難しくしていくといいみたい。

だから、いきなりきびしい条件で会話の訓練はしないで
ゲーム形式で楽しみながらやっていくよ。

話す時間も、10分ではなく、30秒から。
それでもの足りなくなったら、1分、2分、3分と長くしていくよ。
話す内容も、政治の話からではなく
好きな食べ物の話からやっていくよ。

まず、一番初めにするのはこれ。

自分の名前を言う。

きみの名前をみんなに言おう。
本名でなくていいよ。
きみがみんなに呼ばれたいニックネームを考えよう。
そして、きみの名前をみんなに呼んでもらって、名前を覚えてもらおう。
名前を覚えてもらえること、呼んでもらえることはうれしいことだよね。

そして、それができたら、次はこれ。

名前を呼ぶ。

相手の名前を呼んであげよう。
朝会った時
一緒に組んだ時
話しかけたい時
用事がある時
などに。

「おまえ」
「こいつ」
「そこの人」
「おい」
「ちょっとちょっと」

って
名前の代わりに呼ぶのはやめよう。

肩をたたいたり
物でさわったりするのもやめよう。

名前を覚えてもらえること
名前を呼んでもらえることは
うれしいことだね。

なぜかと言うと
自分のことを認めてもらえた気持ちになるから。

自分の名前は他の人にはない自分だけの物。
だから、名前を呼ばれると

「他の誰でもない、あなたに用事があるんだよ。誰でもいいわけじゃなくて。」

って言われたような気持ちになるんだ。

PAOでは、インプロ(即興演劇)講座で使っているインプロゲームを使って話す練習をするよ。
会場でゆういちが教えるのでここでは詳しいやり方などは省略するね。

今後、インプロゲームは【  】で囲んで書いていくよ。

良い声で話す。

「良い声」と言っても、いろんな意味があるね。
ここで言う良い声とは「相手の事を大切に思って発する声」のこと。
「相手を喜ばせたい」「楽しませたい」「元気づけたい」など
相手を思って出した声は「良い声」だよ。

【ハッピーボイス・デビルボイス】という
インプロゲームを使って
良い声のトレーニングをするよ。

「ハッピーボイス」は
幸せな気持ちを持って
相手をハッピーにさせる声。

「デビルボイス」は
暗い気持ちで
相手も不幸にさせる声。

これで4通りの声が出せるよ。

「自分も相手もハッピー」
「自分だけハッピー、相手には不幸を」
「自分も相手も不幸」
「自分は不幸、相手にはハッピーを」

相手に言葉を届ける。

【わたしあなた」や【名前コール」などのインプロゲームで
相手に言葉を届けよう。

相手の方を見て
身体を相手に向けて
相手に気を飛ばして
声を、そして気持ちを届けよう。

無言で話す。

【バースライン」【ナイフとフォーク」などのインプロゲームで
言葉を使わないでやり取りをしてみよう。

バースライン

もしかしたら「せっかく話す練習をしに来たのに話さないの?」って
思うかもしれないね。
だからといって、声を出して文章を読んだら話したことになるというわけではないよね。

「やりとりをする」や「相手と関わる」に声が付くのが
「話す」なんだ。

声が出てても、相手と全く関わってなかったら
それは声を出しているだけであって
話しているというわけじゃない。

相手に自分の考えを伝えるということを
全身を使ってやっていくよ。

共通点を見つけると仲良くなれる。

【3つの共通点ゲーム】で3人の共通点を3つ見つけよう。
どうすれば見つけられるだろうか?

まずは、自分が思いついたことを他の2人に話さなければいけないね。
話さなければ、どんなにいい考えを持っていても、他の人には分からないから。

だまっていても、気づかってはくれない。
家族やとても仲のいい友達なら話さなくても分かってくれるかもしれないけど
初対面の人や、まだ仲良くなれてない人には
声を出して、話さなければ、分からないし、気づかってもくれない。

この時に、気を付けたいのは
共通点を見つけたいんだけど
ウソをつかないようにしたいね。

共通点が見つからない
つまり、自分は他の2人とは違うと
いうことを言わなければいけない

つまり、ちょっと仲間はずれになる怖さがあったりするかもしれない。
自分のせいで、グループが遅くなってしまうかもしれない。
でも、ウソついて成功してもうれしくないんじゃないかな。
そう、ウッズさんのように、正々堂々と自分にウソをつかないで競争したいね。

仲間を探そう。

【カテゴリゲーム】を使って、みんなの前で
自分のことを大きな声で伝えて、自分の仲間を探そう。
これも、もしかしたら、仲間が見つからなくて
自分一人だけになってしまうかもしれない。
でも、そのギリギリのところも楽しめるだろうし
自分一人だけになってしまったら、笑えばいいと思うよ。

絶対全員が集まってくるものより
たくさんいるのに一人だけ仲間が見つかった時はとてもうれしいよね。

自分のことを話そう。

二人組になり、ひとり30秒で「自己紹介」をしよう。
自分がどんな人なのかを目の前の相手に伝えよう。

相手と同じところが見つかったら
それを言えば仲良くなれるかもしれないね。
相手と違うところが見つかったら
それはきみの個性だから、自信を持って伝えたらいいと思う。

さて、自己紹介はできたかな?
例えば、住んでいる場所を言ってもいい。
ただ、それは本当にきみのことを知ってもらうための言葉だったかな?

次からは、もっと自分のことが分かるテーマだよ。
本当の自己紹介とも言えるかも。

好きかきらいか。

次は「好きな食べ物」を話すよ。
自分の「好き」や「きらい」が分かることはとても大事。

大人でも時々、自分の気持ちが分からない人がいるよ。

「何を食べたいか分からない。」
「相手のことを好きかどうか分からない。」
「どんな仕事をしたいか分からない。」
「たまに休みになっても何をして遊びたいか分からない。」
何を聞かれても、自分の気持ちが分からないから「何でもいい。」と答えてしまう。

ずっと、人の意見に合わせて自分の意見を殺したり
やりたいことがあってもガマンを続けたりしているうちに
「好き」「きらい」を感じなくなっていくんだ。
感じたらツラいからね。

だから、自分の「好き」や「きらい」が分かって
伝えられることはとても大事。

感情。

次は「最近、心が動いたこと」を話すよ。
もし、最近のことで思いつかなければ
昔にさかのぼってもいいよ。
でも、前世までさかのぼるのはダメ(笑)

感情の変化。

【3つの感情を見つけるゲーム】で
話の中に気持ちの移り変わりをみつけよう。
どんな話にもそれは見つかるよ。

見つかったら、その3つの気持ちに注意してもう一度話してみよう。
そうすると最初に話した時より気持ちが高まるし
話したいことが増えてくるよ。
不思議だね。
感情が変わると見えるものが変わってくるんだ。

具体的にしよう。

「自己紹介」や「最近うれしかったこと」の時に
時間があまってしまった人もいるかもしれないね。

それは、なぜかというと、具体的にする力がたりないからだ。

ぼんやりしているものを
もっとはっきり
もっと分かりやすく
もっと細かく
もっとくわしくすると
話すことがどんどん増えてくるよ。
例えるなら、カメラのピントをしぼる感じ。

そのカメラのピントをしぼるトレーニングが
【これ何?】や【名前ととくちょう】などのゲームだよ。

このゲームで、物をしっかり観察して、より具体的に話をするよ。
普段なにげなく見ている物も
よく見ると新しい発見がたくさん。

さらに感情を変えて見ると
また違った発見ができるよ。

「冷めた目で見る」
「興味深く見る」
「大切なものだと思って見る」

同じ物なのに
感情を変えただけで見えるものが変わってくるよ。

さらに想像力を足してみよう。

【隊長と隊員ゲーム】では「今いる場所が、ジャングルだったら?」と想像する。
きみの想像力で、目の前にある「ブラインドのヒモ」は「ヘビ」に見えてくるかもしれない。

さらに、相手の力を使おう。

【インタビュー】
【ユーチューバーの番組ゲーム】で、
番組を作ってみよう。

ゲストにインタビューをして
ゲストのことを詳しく聞いてみよう。
ここで司会者は聞く力が必要になるよ。

ストーリーの型

少しずつ話の構成についてもお伝えしていくよ。
日本では、起承転結というけど、
PAOでは「はじめ、なか、おわり」という
三部構成からやっていくよ。

次に、気持ちの流れを使った四部構成のお話の型もお伝えしていくよ。
「嬉しい話の型」や「がんばった話の型」を使って話してみよう。

自分のことを話そう。

自分のことをもっと探検してみよう。自分の中にはたくさんの宝がねむっているよ。

自分のおすすめポイント。

自分を人に紹介する時におススメできるポイントを見つけよう。世界一でなくてもいいので、自分の特技や長所、おもしろい所、他の人とは違うところを見つけてみよう。

自分の残念なところ。

次は、自分の残念なところ。失敗した話や、上手くいかなかったこと。これは、相手に 伝える時に暗く話すとあまりよくないみたい。そうではなくて、明るく、楽しく話してみる。自分の弱いところをおもしろく話すことができれば、人から好かれやすくなる。それは、相手を楽しませるために自分の弱いところをオープンにしてくれたことがうれしくて、そういう人を好きになるんだ。

わたしの前世

自分のおすすめポイントと、残念なところを使って、自分の前世の自己紹介をしよう。 つまり、前世のおかげで、または前世のせいで今の自分があるということなんだ。例えば こんなふうに。

「わたしの前世はカッパだと思います。それは、泳ぐのが得意だからです。海に行ってもずっと泳いでいられます。でも、キュウリはキライなんです。だから私の前世はキュウリのキライなカッパだと思います。」

ここでは、PREP法という話し方もやってみるよ。
P=Point(結論)
R=Reason (理由)
E=Example(事例、具体例)
P=Point(結論)

わたしの前前前世

もう、前世の前の前だから、全然今と違っていいよね。つまり好き勝手話していいってこと。ちょうどいいから、なってみたい自分を話してもいいね。

わたしのレシピ

自分は何でできていて、どうやって今の自分になったのかを、料理の作り方みたいに、お話していくよ。

わたしのプレゼンテーション。

わたしのレシピでは、お父さんの強さ100キログラムとか、普通は数字にできないものを数字にしたね。
今度は自分の気持ちをグラフにしてみよう。例えば『野球をやりたい気持ち』をグラフにすると下の ようになるよ。グラフを見ながら、発表してみよう。

「ぼくは小学1年生から野球を始めました。始めは楽し かったのですが、練習がきびしいので、小学4年生のころ には175YRTまで落ち込んでしまいました。あ、YRTはやりたいの単位です。でも小学5年生の時に試合に勝ってからまた野球のおもしろさを感じてグングン上がってきまして、現在、中学2年生ですが、過去最高の406Y RTであります。ですから、お母さん、新しいグローブを買ってください。」

という感じにプレゼンテーションもで きるよ。
家でやってみては?

どのように話せばいいのか?

『何を』話せばいいかについては、だんだん分かってきたね。では、『どのように』話 せばいいんだろう? ゆういちが良く言っているのは『明るく』『元気に』『優しさを持 って』の3つだよ。人は、話の内容よりも、どのように話しているのかという雰囲気の方 で話の感じをつかむよ。話の内容が良くても『暗く』『元気なく』『イジワルに』話して いると、良い話には聞こえてこない。
人は話を聞くことによって、明るい気持ちになりたいし、元気になりたいし、優しくされたいと思うんだ。わざわざ、暗い気持ちになりたい、つかれたい、イジワルされたい、 って人はあまりいない。
話すということは、話すことを通じて、人に『明るさ』や『元気』や『優しさ』をあげることだと思うんだ。

どこを見て話せばいいのか?

質問があったので答えていくよ。
「どこを見て話したらいいですか?」
絶対これって言えないんだけどね。
一対一の時と、相手がたくさんの時に分けてみるね。

一対一のとき。

相手の顔を見て話したらいいと思うよ。相手の顔のどこを見るかというと、目とかいろんなところ。いろいろ見るところを変えていくといいよ。ためしに、相手のあごだけをずーっと見て話してみよう。そうすると、相手は、あごをさわりだすよ。そして「あごに何かついてる?」って聞いてくるよ。一か所だけ見るのはあまりよくないみたい。

では、目を見た方がいいか ? よく「相手の目を見て話しなさい」って聞くものね。 相手の目を見て話したほうがいいけど、ずっと見てなくていい。時々そらしてあげた方が いいみたい。話を聞いている方も、ずっと目を見られていると、気が抜けなくてつかれてくるからなんだ。だから時々、目をそらしてあげた方がいいね。

お互いに目が合っている時間の長さで、見ている意味が変わってくるよ。動物は目を合 わせるか、そらせるかで、どっちが強いかを判断するんだけど、野生のサルと目を合わせてはいけないって聞くね。目を合わせると敵だと思っておそいかかってくるんだって。人間の場合は、ずーっと見つめ合うと、愛情か敵対心のどちらかが生まれるよ。特に初対面 だったリ、あまりまだ仲が良くない時は、時々、目をそらしてあげた方がいいみたい。愛情も敵対心もどちらもドキドキするものだからね。

相手がたくさんのとき。

相手一人ずつの顔を見て話したらいいと思うよ。では、右から順番に一人ずつ見ていくのかというと、そうじゃない。右の方を見たら、今度は左、次は真ん中というふうに、プ ロックに分けて見た方がいい。そうしないと、片方ばかり見ることになるから、反対側の人達が退屈しちゃう。顔のどこを見るかというと、やっぱり目なんだけど、「目」という ものだけを見ると考えるとダメみたい。「目を見ることを通して」相手そのものを見る感じ。そうすると、相手は認められた気がしてうれしいみたい。

インプロゲーム 「PPP」

相手の目を見て話すことを、遊びながらきたえていくゲームだよ。聞く人は、指を上から下に15秒かけて下ろす。下にはスイッチがあると想像し てその指で押す。そして「ピーピーピー」と言う。聞く人は話している人を見ながら指を下ろしていくんだけど話している人に見られたと思ったら指を上に戻すんだ。話している人に見られた感じがしなかったらスイッチを押して「ピーピーピー」って言う。話す人は「ピーピーピー」が鳴らないように、みんなの顔を見て話していくよ。

相手がたくさんのとき。 (知らない人のとき)

知らない人たちの前で話すのってドキドキするね。みんなが自分に好意を持っているわけじゃないようだからね。そういう時にどうすればいいんだろう?
まずは、全体を見渡してみんなの顔を見るんだ。その時にいろんな顔が見えるね。自分のことに興味を持って応援してくれそうな人、得に興味があるともないとも言えない人、 興味なくて話も聞く気がない人。さあ、誰を見て話したらいいと思う? さっきのように 全員を見ていった方がいいのかな?それとも話を聞く気がない人をたくさん見て、話を
聞きたくさせた方がいいかな?

誰を見たらいいかというと、自分に興味を持ってくれて応援してくれそうな人だよ。その人はいいお客さんだからね。その人を何人か、会場の横とか真ん中とかいくつかのブロ ックに分けて見つけるんだ。一人だけとか、横だけだと「なんでそこばっかり見て話してるんだろう?」ってなるからね。しばらくはその人達だけを見て話すんだ。聞く気がない人を見ない方がいい。話している自分の元気がなくなるからね。そちらを見返すよりも、 自分のことを応援してくれるいいお客さんを楽しませて、よろこんでもらおう。そうすると、その人の周りにいるお客さんが「あれ?この話おもしろいみたい。」って気がついて興味を持ち始めて、いいお客さんに変わってくるよ。いいお客さんを伝染させるんだ。
逆はやらない方がいいみたい。話を聞かない人に聞くように言ったり、寝ている人を注意したりしない方がいい。それをやってしまうと、せっかく興味を持って応援したいと思っていたお客さんに「つまらないな。楽しみにしてたのに、いつ始まるんだろう?」と思わせちゃう。いいお客さんが減っていってしまうんだ。

魅力的な話し方。

上手じゃないけど、なぜか聞いてしまう話とか、
なぜか気になってしまう人っているよね。

それが魅力的ということなんだ。

どのようにすれば、そうなれるのか?
どうすれば 自分のいいところをみんなに伝えられるのか?

それは、会場で話すね。

では、次へ行こう。

次は…
「おわりに。」