僕が子どもたちにインプロを教えていることを
人に話すと、
「子どもの発想力はすごいでしょう。」
「子どもはみんな天才でしょう。」
と、たまに言われます。
そのたびに思います。
「それは”子どもは天才で発想力が素晴らしい”と、
どこかで聞いたからそう思うだけなのでは?」
「天才かどうかはどうやって分かるの?」
天才かどうかの確認はどうしているのか、
基準は何で、天才だと認定しているのは
誰なのでしょう。
インプロで「私は木です」というゲームがあります。
身体を使って、アイディアを積み重ね、絵を描いていきます。
「私は、木です。」
「私は、木になっているリンゴです。」
「私は、そのリンゴを採ろうとしている人です。」
というように。
ある日のインプロで、こんなシーンができました。
「私は、木です。」
「私は、枝です。」
「私は、枝に刺さっているトカゲです。」
このシーンを見た人の多くは、
「え?」「気持ち悪い」「残酷」というような
顔をしていたように思えました。
でも、僕は、何を表したいのか分かったので、聞いてみました。
「そのトカゲは、誰が刺したの?」
「刺したのははね、モズ!!はやにえ!!」
モズという鳥は、虫や蛙を捕まえて、
木の枝に突き刺す「はやにえ」という
習性を持っています。
それをこの子は表現したかったのです。
でも、僕がそれを知らなかったら、
多くの人のように
「気持ち悪いなぁ」と思ったかもしれません。
本当に天才の子どもの言動は、
普通の大人には意味不明で、
理解不能かもしれません。
知識のある側、分かっている側、新しい側がバカだと思われ、
時には「悪」とされることがあります。
大勢の方が正しく、少数派は間違っているとされることがあります。
みんなと同じ意見を言わなければ、仲間外れにされたり、
いじめられてしまうこともあります。
子供たちが天才かどうかは、僕にはまだ分かりません。
僕は天才じゃありませんので、僕の理解を越えたことが起こったときに、
僕の意識外の価値観を捉え理解できるようにしたいと思っています。
僕は、虫や動物については適度に詳しいので、
例えば「はやにえ」を理解してあげることができましたが、
特定の分野以外では、知らないこと、
分からないこと、できないことが盛りだくさんです。
僕の気付かないこと、見逃していることがたくさんあるのではないかと思います。
なので、子どもたちをよく見て、よく聞いて、よく感じるように、
今も、がんばっているところです。
講座の最終日に発表会をすることがあります。
その時は保護者のみなさんとしっかりお話をしています。
例えば、比較対照は誰なのかについて。
他の子と比べることで、その子の成長が分かるのでしょうか?
ぜひ「ちょっと前のうちの子」と「目の前のうちの子」を比べてみてほしいものです。
そこに、その子の成長が見られると思います。