子どもにインプロ(即興演劇)を教えているときに、私たちは「自分らしく、個性的に、自分の普通がみんなと違っていてもいいよ、それが面白いよ!」と言っています。しかし、実際にワークショップの最中に歩き回ったり、自分の話が止まらなくなり他の子が困っている姿を見ると、「違っていいよ」という言葉を心の底からの本心で言っている自信が薄れていきます。
吃音のお子様をお持ちの保護者の方から「演劇をしたら、吃音が治るでしょうか…?」とのお問い合せをいただきます。しかし、私たちは「吃音」の専門家ではないので、どのように対応したらいいのかいつも悩みます。
「ひきこもり、不登校の子にインプロをしてほしい!」という声もいただきます。まねきねこの子どもインプロにも同じ問題を抱えた子どもたちが参加することがあり、その子たちがだんだんとイキイキしていき、自分の言葉でみんなの前で話すことができるようになる姿を見て、インプロがいい効果をもたらしているという実感はあります。しかし今現在ひきこもっている方々とお会いする機会は全くないので、どのようにその方々とインプロをしたらいいのか正直よく分からないのです。
このように自分たちが実際にぶつかっている壁、困っていること、
それらを解決したい!という気持ちをきっかけにこの講座を企画しました。
「みんなちがって、みんないい」の「みんな」というのは誰のことなのでしょう。
その「みんな」はどんなことを考えているのかを知りたい、と私たちは思いました。
私たちは先生の話を聞くだけではなく、話し合ったり、当事者や当事者の家族の生の声を聴くこと、それらを大切にした講座をしたくて企画しました。参加者の方々の感想からも、それを大いに求めていたということが分かりました。
グループワークやシェアリングの時間を多くし、話し合うときもお互いが話しやすく、傷つかないように、安全な場をみんなで作り合うということを目指しました。
講座を受けたあと、自分たちで行動するきっかけ、第一歩になるための講座でありたい。そのために、「体験」すること、「自分の言葉」で話すことを大切にしました。
特定非営利活動法人まねきねこ
理事長 仲野雄一