生徒たちは、「失敗」という「痛み」を避けるために、様々なテクニックを考えだし、使っています。

キースが生徒たちに、問題に取り組まないための逃げ口上テクニックを披露すると、教室の緊張は驚くほどほぐれます。大学生ならひっくり返って笑います。他のみんなも同じような戦略を使っているのが分かるので、ほっとするのです。

1.弱々しく、自信なさげに、はじめる。

「シーンを作るために前に出て!」というと、生徒の多くは弱々しく自信なさそうに始めます。まるで病気か、または、それを達成するだけの気力がないかのように。彼らは同情心に働きかけることを学んできたのです。問題が簡単であったとしても、彼らは「自分にはとてもできません。」という、使い古されたトリックを使い続けます。この作戦は、もし、自分が『失敗』したら見ている人達の同情を誘うはずだし、『成功』したら、より大きな報酬が待っているはずだという期待感から使われます。

しかし、実際は、そのようなネガティブな態度は、だいたいの場合本当に失敗を導きますし、見ている側全員をうんざりさせます。

2.問題を予想して、解決方法を準備しておく。

次のテクニックは、問題を予測して、その解決方法をあらかじめ準備しておくというものです。 おそらく国語の音読の授業で身に付けるのでしょう。自分でどの段落が回ってくるかを予想して、意味や読み方調べに集中するというような。

これには2つの大きな欠点があります。
1.自分が準備している間、他者のしていることを無視することになるため、他者の言動からは何も学ぶことができない。
2.予想はだいたい外れる。

3.列の端に座る

グループ全体から本人を阻害してしまう。

4.腕を組んでそっくり返る。

大学生の中には、教授たちの立居振舞いや態度を、無意識のうちに身に付ける者もいます。舞台や映画を観ている時も、そっくり返って、身を引き、腕をしっかり前で組み合わせ、頭を後ろに押し付けます。このような姿勢は、人が感情的に「関わる」ことをしない、「主体的」にならないという態度を助長します。学びの場においては、本人を孤立させ、客体化してしまいます。

その他のテクニック

ジョン・ホルトの「子どもたちはどうつまづくか」には、問題を解決する方法を学ぶのではなく、問題を回避する方法を学ぶ例が挙げられています。

例えば・・・、

顔をしかめて、鉛筆をかじり、『頑張っているフリ』をすれば、答えは先生が書いてくれるだろう。

テクニックを理解し、クラスを健康的な状態へ

このようなテクニックは、子どもだけではなく、大人も使います。大人がそんな態度を取って効果があるのでしょうか?大人が前に出て発表する時に、病人のように出ていくことが多くあります。しかし大人がそのような態度を取って、失敗したとして同情を引くことができるでしょうか?子どもの時は上手くいったので、大人になっても同じ作戦を使うのです。

そして、そのような自分を笑い飛ばし、そのような態度が全く生産性がないことだと納得すれば、生徒の顔からは「病気」の色が消え、「健康」な色になります。そして、グループ全体の姿勢が瞬時に変わるのです。

 

参考文献:
Impro: Improvisation and the Theatre