旅ねんど 〜その土地の空気と、心の揺らぎを形にする〜

「旅ねんど」は、日本各地を旅して回り、その場所で出会った景色、名物、人々との会話、そして自分自身の気づきを、その場で粘土作品として昇華させる私のライフワークです。

単なる風景の模写ではありません。 それは、旅先での「一期一会」を自分の中に一度取り込み、指先を通じて再びこの世界へ取り出す、私と場所との対話の記録です。

旅の欠片(かけら)を編み合わせる

私の作品には、その土地ならではの「物語」が幾重にも重なっています。

  • 伊勢では、五十鈴川の澄んだ水辺で見たカニの動きと、名物・赤福のあんこ色が混ざり合い、両手で餅を頬張る「スベスベアカフクガニ」が生まれました。
  • 豊田・小原では、四季桜と紅葉のコントラストの中で、旅人からの一言で作品に色が灯り、人々の願いを届ける「昇り熊と降り熊」が姿を現しました。
  • 蒲郡のお正月には、窓の外の森を自分自身を阻む「過去の考え方」に見立て、古い慣習を断ち切る桃の生き物を添えた作品が誕生しました。

食べ物の味、風の音、偶然隣り合わせた人との会話。それらすべてが、粘土をこねる私にインスピレーションを与えてくれます。

「今、この瞬間」を固定する即興アート

旅ねんどの真髄は、「即興性」にあります。

香嵐渓で味わった「もみあげまん」の三層の味の感動が、河原のロックバランシング(石積み)の風景と重なり、三色のカエルが積み上がる。そんな、その時・その場所でしか起こり得ない化学反応を、鮮度の高いうちに形にしていきます。

「今、この瞬間の驚きを、忘れないうちに形にする。」

それは、私の人生そのものを形にすることでもあります。

小さな物語が、あなたの日常へ

私にとって「旅ねんど」は、土地の文化や人々のこだわりを自分なりに解釈し、新しい命を吹き込むプロセスです。

指先から生まれたこれらの小さな生き物たちが、旅の空気感を纏いながら、あなたの日常にも新しい視点とクスッとした笑顔を届けることを願っています。