それでは、ストーリーを殺すテクニックを1つずつご紹介していきます。
一つ目は「Blocking」です。

「Blocking」とは?

「Blocking」とは、相手のアイディアに対して「Block」すること、つまりアイディアを拒絶して受け入れないことです。

インプロの初心者はブロッキングをやりがちです。インプロでは未知のストーリーを作っていくことになりますが、その未知の部分に入っていくことに恐怖を持っていると、相手からのアイディアに乗ることができません。相手のアイディアに乗ってしまうと未知の世界に入ってしまうからです。ですから自分を守り、相手からのアイディアが自分に入ってこないようにします。そのために、いろいろな方法で「Block」をします。

人間は自分の身に危険なことが起こらないように日々生活しています。そんな中でも特に自分の身を守りたい保守的な人々は「つまらなくする」達人です。彼らは悪気もなく、当たり前のようにアイデアを「Blocking」します。本当に悪気はないのです。ただ恐怖心がそうさせるのです。

「ノー」と言うことが「Blocking」というわけではありません。「Blocking」は、言葉としての否定だけではなく、キャラクター、表情、態度、行動、感情なども含まれます。

「Blocking」は相手のアイディアを殺すだけではなく、その後のシーンのあらゆる可能性を殺してしまいます。
興味深いシーンを作るため、インプロのプレイヤーはまず「Blocking」を解消する必要があります。

「Blocking」の例


街の人 「赤ずきんちゃん、今日はおばあちゃんに会いに行くの?」
赤ずきん「私にはおばあちゃんなんていません!」

ママ  「おばあちゃんにクッキー届けてくれない?」
赤ずきん「でも、おばあちゃんは旅行に出かけているわよ、ママ。」

自分の状態を保ち続けたいと感じた時に、「Blocking」をやりがちです。

A「コーヒーはいかがですか?」
B「紅茶をください。」

A「チョコレートクッキーはいかがですか?」
B「普通のをください。」

A「泳ぎにいきませんか?」
B「結構です。」

キースはこの様子を「敵に少しも触れさせることを許さないプロレスラー」と例えています。

時には、自分が出したアイデアをブロックすることもあります。

A「泳ぎにいきませんか?」
B「いいですね!」
A「あ、ごめんなさい!今日はプールが休みなのを忘れてた!」

観客との関係

「Blocking」が起こると観客は笑います。
しかし、その笑いは、シーンに対する笑いではありません。
アイディアを出した人がアイディアを壊されて挫折することを見て笑っています。
シーンが上手くいっていないことに対して笑っています。

しかし、未熟なインプロのプレイヤーはその笑いを、
「自分の行なったことが面白いから笑った!」と勘違いしてしまいます。
そして「Blocking」をやめられなくなるのです。

ですから、インプロが習得できていない初心者は、観客の前に出してはいけないと言われています。

シアタースポーツの起源

「Blocking」をしたかどうかを見分けるのが難しい場合もあります。
それは、スポーツで反則をしたかどうかを審判が見分けるのと似ています。

キースは、3人の審判を置き、シーン後に審判から俳優へブロッキングに対する指示をさせました。
その指導を受けるのが「Blocking」を解消するいい方法です。

キースはこれをショー形式にして上演しました。
そうしたところ、大変評判が良かったそうです。

これが、シアタースポーツの起源です。

「Blocking」を解消するためのエクササイズ

「ツードット」はお互いのアイディアを受け入れ合うことを学べるエクササイズです。
「二つの場所」は「Blocking」を敢えて行うことで、「Blocking」を理解し意識することができます。

参考文献:Impro for Storytellers(Keith Johnstone著)